自社ECを運営する「中の人」が考えるECカートシステムの選び方3つのポイント

呉 達人

こんにちは。長野県佐久市のShopify Experts認定企業・合同会社FRONTIER TRADE代表の呉(くれ)です。
Shopify新規構築をはじめ、自社EC・Amazon・楽天市場・クラウドファンディングを活用した総合的なEC運営支援に取り組んでいます。

自社ECサイト(ネットショップ)を運営したいと考えたときに、ECカートシステムを利用することになります。
自社で内製することやゼロから構築することも出来なくはないですが、余程の大手企業や資金に余裕がない限りはECカートシステムを提供しているサービスを利用することになります。

無料から有料まで様々ですが、一般的にECカートシステムの比較は価格や機能性といった分かりやすい要素で比較されることがほとんどです。それはもちろんその通りですが、果たして比較している人が実際にECサイトを運営しているのかどうかは別問題です。
それがいわゆる一般論とも言えますが、一般論ではなく実際にECサイトを運営している「中の人」だからこそ分かることや経験したこともあります。

今回は自社ECを運営する「中の人」が考えるECカートシステムを選ぶうえでの3つのポイントをアウトプットします。

MEMO

この記事はECカートシステムの単純比較ではなく「考え方」を書いています。

ECサイト運営の目的

まず初めに、こうしたECカートシステムの比較や検討をする際に重要なことが「なぜ自社ECを運営するのか?」を見失わないことです。当たり前かもしれませんが、意外といざ実務レベルで進めてみると目の前の作業やタスクに追われて見失いがちです。
まさしく私自身も周りの人たちがECサイトを運営しているから自分もやらねば、という他人本位でECサイト運営を考えていた時期もありました。

自社でECサイトを運営する最大の目的は売上を上げることです。
いくら商品やブランドが有名になったとしても最終的に売れなければ意味がありません。そういった意味でECサイトはお客様が最終的に決済を完了する(購入意思を決定する)最重要かつ最終地点です。

感覚的には実店舗と同じです。より快適に、よりワクワクするような、より選びやすいECサイトであるべきです。
それは同時に運営する自分たちにとっても快適であることが重要です。それこそ自社ECサイトを運営していくうえで長く続ける秘訣、成功するポイントと言えるかもしれません。

では、実際にECカートシステムを選ぶうえで考えたい3つのポイントをまとめていきます。

価格・運営費

ECカートシステムは大きく分けて無料と有料に分けられます。
恐らく多くの人が、まず価格、つまり運営費が選択肢になるでしょう。

無料のECカートは文字通り運営費が掛からないので手軽にスタートできます。しかし当然ですが無料には限界があり、例えばECカートシステムのロゴが入ったり、カスタマイズに制限があったり、結局は有料にしなければ自由にカスタマイズできないといった場合も多々あります。

無料のECカートシステムを検討するなら、こうした要素を考慮すべきです。

  • 運営費を掛けたくない
  • カスタマイズは最低限で良い
  • とにかく出品して決済が出来ればよい

つまり多くを望まないという前提で考えれば無料のECカートシステムは使いやすくて重宝します。
私の経験と個人的な見解として無料のECカートシステムでお勧めするのはBASEです。

一方、有料となれば費用感は様々です。おおよそ月額数千円~数万円が相場ですが、1つ注意すべき点があります。
それは価格が高いECカートシステムだからといってベストとは限らないということです。

一般的な買い物や外食もそうかもしれませんが、人は価格によって商品やサービスに対する印象が大きく変わります。安ければ期待感は少なく、高くなればなるほど期待感も高まります。期待感以上の価値を提供してこそ価格設定が適切かどうかの真骨頂とも言えます。

とはいえ、経営的に考えれば価格が安いに越したことはなく、「安くて使いやすくて、ちゃんと売れる」ECカートが理想的です。
いくらが安くていくらが高いか、それは経営者の価値観や会社の資金状況にもよるでしょう。ただ月額数十万円かかるシステムが決して安いとは言えません。もちろん、それ以上に商品が売れて十分に回収できているなら話は別ですが、自社ECサイトは何かと時間が掛かるものです。

本格稼働する前段階から月に数十万円も掛かるシステムは少なくとも中小企業や小規模事業者には負担が大きくなります。

機能性(標準・拡張性)

価格・運営費と合わせて考えたいのが機能性です。

標準機能ではどこまで利用でき、どこまでの範囲をいくらで拡張(カスタマイズ)できるのかという要素です。

これもまた価格が高ければ良いというものでもありません。そもそもの運営費で月数十万円掛かるのに使える標準機能が少ない、あるいは拡張性に欠けるECカートシステムは少なくありません。いずれは淘汰されるでしょうが、ECサイトに関するリテラシーが低いと陥ってしまう可能性大です。

ECサイト運営者にとって最も理想的なのは「実現したい機能に合わせて柔軟に拡張できる」ことです。
100個のECサイトがあれば実装したい機能、実現したい内容は100通りです。

多少コストを掛けてもいいから機能を充実させたいという戦略もあれば、機能は最小限に絞って運営費を抑えたいというのもあります。
あるいは初期段階では最低限に留め、商品の生産状況や売れ行き、アクセス数などに応じて拡張していくのも良いでしょう。まさにビジネスと共にECサイトも成長していくようなイメージです。

こうした拡張性に乏しく、「ここまでが限界」というのが分かっているのといないのとでは雲泥の差です。
無料のECカードであれば拡張性にも限界があるのは分かりやすいと思いますが、有料だからといって何でも出来るとは限りません。
かと言って「この時期にこの機能を実装したい」みたいな中長期的な計画があれば別ですが、往々にして計画通りにはいかないものです(笑)

計画は計画で大事ですが、もっと大事なことはフレキシブルに対応できることです。
そう言った意味で「この機能を追加するには数万円掛かります」といった負担が大きいと、仮にその機能を実装したは良いものの成果にならず回収できなかったら悲惨です。それは誰の責任か、そんな話はしたくないですよね。

先のことは誰にも分かりません。良かれと思って実装した機能がユーザーにとっては邪魔な機能になる可能性もあります。
そうした状況に備えて「導入するのも撤退するのも1日で出来る」といった柔軟性があると理想的です。

デザインの質・UI

ここで言うデザインはユーザーが利用する表側のデザインと、私たちEC運営者が利用する管理画面のどちらも意味します。

いくら表側をカッコいいデザインにしてユーザーが満足したとしても、運営側の管理画面が使いにくいとストレスが溜まります。
確かにユーザーにとっては管理画面のデザインなんて見えないので全く関係ありません。売上に直結するのはお客様の購買意思決定なので運営側の管理画面など気にする必要は無いという意見もありますが、私はそうではないと考えています。

やはり日々目に触れて作業する管理画面が使いやすければ使いやすいほど、運営者のストレスは軽減されて余計なことに気を使う必要が無くなります。より大事なマーケティング、キャッチコピー、画像編集といったクリエイティブな業務に専念できます。

管理画面が使いやすいことは、イコール管理画面のデザインの質が高いとも言えます。
私はもともとWEB関係の仕事をしていたのでよく分かりますが、WEBにおけるデザインは重要です。お客様の目に触れる表側のデザインはもちろんですが、意外と裏側、つまり管理画面やコントロールパネルのデザインに手が加えられているかどうかでシステム提供者(プラットフォーマー)の心意気が分かるものです。

物凄くこだわる必要はありませんが、いくら何でもボタンが小さいとか、どこに何があるか分からないというデザインでは業務も捗りません。

運営費が高い割に管理画面が使いにくいECカートシステムは、ハッキリ言って職務怠慢です。しかしこれにはジレンマもあり、特に昔からサービスをリリースしているECカートシステムがなかなか裏側を変更するというのは抵抗があるものです。理由は単純で、裏側はECサイトを利用する顧客とは別で運営者側の問題なので直接的なECサイトの売上には直結しないからです。
その割に万が一ミスが起きると各事業者の運営に支障をきたしてしまいます。そこまでのリスクを冒してまで管理画面のデザインの質を改修する価値があるのか?という議論がなされた結果、いつまでも放置されているのではないかなと邪推しています。

そう言った意味でECカートシステムではなくECモールになりますが、ヤフーショッピングは昨年くらいまで割と昔ながらのダサい管理画面でした。しかし恐らく2020年に入ってからリニューアルしたようで、だいぶ使いやすくなりました。

管理画面のデザイン改修が入ると、運営者側にも配慮してくれているんだなとつくづく感じます。

有料にするならバランス重視

ECカートシステムを選ぶうえでのポイントを3つ書きましたが、入り口としてはやはり有料か無料かになるでしょう。

無料ECカートシステムを選ぶなら、それなりの規模で構わないという意思決定になります。具体的な目安として月商30~50万円くらいでしょうか。もちろん売り上げ規模だけではありませんが、よくあるのがBASEも推している芸能人やユーチューバーが副業的にオリジナルグッズやノベルティを販売する、といった使い方です。もしくはアーティストや作家さんが自分の作品を販売するにも良いでしょう。基本的にはパーソナルな商材、方向性であれば無料カートでも相性は良いです。

その逆に法人規模で商品やブランド展開をする、あるいは取り扱う商品数を増やしてセレクトショップ的に展開するなら間違いなく有料ECカートシステムにするのがお勧めです。

いくら最初は無料で、と考えてもいずれ有料カートに移行するなら最初から有料カートで良い、という話です。

とはいえいきなり月に数万円、数十万円も掛けられないのも事実。

そういった複数の要素を考慮したうえで最もバランスが取れているECカートシステムこそShopifyです。

運営費は月額3,000~10,000円程度が相場です。
デザインはユーザー側の質は高く、管理画面も使いやすい設計。
そして最大の強みは拡張性の自由度が高いことです。Shopifyアプリによって実現したい機能を自由に選択できます。

唯一の難点は、このShopifyアプリは海外仕様で英語ばかりなので英語が苦手な人にはハードルがあるということです。
また、どんなShopifyアプリが良いか悪いかといった情報が日本国内ではまだまだ少ないです。

そう言った意味でShopifyアプリの情報に関してはこのブログでも今後積極的に扱っていきたいです。
もちろんShopify公式情報や構築会社さんの情報もあるので、そういった情報も取り入れながら日本全体のShopify普及になればと、僭越ながら考えています。

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