呉 達人
Shopify新規構築をはじめ、自社EC・Amazon・楽天市場・クラウドファンディングを活用した総合的なEC運営支援に取り組んでいます。
昨日、7月8日にShopify公式ブログに掲載されていましたがコンビニ払いや銀行振込といった現金払いが可能な決済システム「KOMOJU」の入金サイクルが週次に選択可能となりました。
https://www.shopify.jp/blog/komoju-weekly-payout
厳密には今月申し込み(管理画面から変更可能)すれば来月から反映され、1週間分(土~金)の売り上げが翌週の金曜日に入金されるようになるそうです。
これでKOMOJUのデメリットであった入金サイクルの長さ(キャッシュフローの悪さ)は大幅に改善されたと言えます。
更にこうした早期入金系のサービスは追加費用や追加手数料が掛かる傾向にありますが、それも一切なしというのはありがたい限りです。
そこで今回は改めてShopifyのキャッシュフローの良さを解説していきます。
目次
Shopifyなら2週間前後で完結
Shopifyで実装できる決済システムは直近の連携も踏まえると多岐にわたりますが、概ねShopifyペイメント・Amazon Pay・PayPal・現金決済(コンビニ・銀行振込)が提供されていれば支障はありません。
実際に弊社で運営しているストアではShopifyペイメントとAmazon Payで70%を占めており、現金決済が残りのほとんどという割合です。
支援しているマーチャント様を分析してみてもShopifyペイメントとAmazon Payが大部分を占めています。
キャッシュフロー(売上の入金サイクル)はShopifyペイメントなら約1週間、Amazon Payは約2週間で実行され、PayPalは手動なので自由です。唯一の欠点がKOMOJUによる現金決済で、月末締め翌月末払いだったので約30~60日間と他に比べれば遅かった。卸売と同じようなキャッシュフローということですね。
それが今回の対応で約2週間程度になったので、これはストアオーナー・経営者にとって非常に助かる要素だと言えるでしょう。
Shopifyで導入できる決済システムの多くが約2週間前後で完結することになり、これは業界的にもキャッシュフローが良いと言っていいのではないでしょうか。
他のキャッシュフローはどうか?
ではShopify以外で販売する場合、主な販路のキャッシュフローがどうなっているか確認しておきましょう。
実店舗:即日~1ヵ月前後
実店舗にて販売する場合、現金によってその場で代金を受け取る場合が多いでしょう。その際は当然ですが即日、その場で売上が入ります。
最近だとキャッシュレス決済が普及してクレジットカードや電子マネーなどの決済方法も増えましたので、その場合は提供しているサービスによって1ヵ月前後になることもあります。
実店舗はメリット・デメリット様々ですので一概に言えませんが、現金ならば圧倒的にキャッシュフローは良いと言えます。
キャッシュレスだとオンラインとそこまで変わらない、といったイメージです(Squareのようにカード決済でもすぐ入金される場合もあります)。
Amazonセラーセントラル:約2週間
Amazonで販売するためのセラーセントラル、こちらはAmazon Payと同じで約2週間サイクルです。
しかし、Amazon Payと違ってセラーセントラルの場合は「引当金」と呼ばれる保留が発生する場合があります。
引当金が発生すると保留された分の売り上げは更に次のサイクル、つまり実質約1ヵ月後の入金となります。
Amazonセラーセントラルでの売り上げが大きければ大きいほど、このキャッシュフローは痛手です。
この引当金が発生するかしないかはアカウントによるそうなので詳細は不明です。
参考までに、代表個人(私)がだいぶ前に所有していたアカウントでは引当金の発生はありませんでした。しかし現在会社で所有しているアカウントでは引当金が発生します。
金額的には例えば約50万円の入金だとすると、だいたい10~15万円くらいは引当金で保留されます。
そういった意味で引当金があるアカウントにとっては手放しに喜べないキャッシュフローと言えます。
引当金が発生しないアカウントであればキャッシュフローは良いです。
楽天市場:約2ヵ月
楽天市場のキャッシュフローは非常に複雑です。
その理由は推測ですが楽天市場側で売上を保持しておきたいのと、決済手数料やポイントなど様々な経費との相殺を計算したうえで処理するためと考えられます。
詳しくは下記ページの「楽天ペイ決済金の精算サイクル」をご覧ください。
https://www.rakuten.co.jp/ec/plan/cost_detail/
そもそも楽天市場はシステム利用料など複数の手数料が複雑に組まれているため、非常に分かりにくいです。
いずれにしても約2ヵ月程度かかるのでキャッシュフローは悪いと言えます。
ある程度軌道に乗っている、実績がある商品を扱っているといったマーチャントではないと出店自体を躊躇するのも無理はありません。
Yahoo!ショッピング:基本約1~2ヵ月
Yahoo!ショッピングも基本的には月1回のみで月末締め翌月末入金なので約2ヵ月かかります。
しかしオプションとして複数回の入金サイクル変更も可能です。それぞれ月2回、3回、6回と選択できるので最短だと約5営業日(約1週間程度)にはなります。
ただしオプションを利用するには手数料が発生します。それぞれ0.1%、0.2%、0.4%が加算されます。そこまで大きくはないので売れ行きが好調であれば入金サイクルを早めても良いですが、それでも追加の手数料が発生することに違いはありません。
オプションも加味して選択の余地がある分だけキャッシュフローは良いと考えてもいいでしょう。
クラウドファンディング:約1~2ヵ月
クラウドファンディングを活用する場合、プロジェクト終了日によりますが概ねどのプラットフォームも約2ヵ月程度です。
上場したMakuakeはプロジェクトが終了した月の月末締め、翌々月の第3営業日となっています。つまりプロジェクト終了日が7月15日だとすると、入金日は9月3日なので、約50日前後となります(曜日は無視しています)。
その他のプラットフォームも概ねプロジェクト終了月の末で締め、翌月末入金が多いので約45日前後(終了日による)となるでしょう。
その中でCAMPFIREは「早期振込サービス」を提供しており、早ければプロジェクト終了から約2週間程度で入金することも可能です。ただし手数料がそれなりに発生します。
(支援総額が20万円未満の場合1万円 (税抜)、20万円以上の場合は支援総額の5%(税抜))
つまりクラウドファンディングは前受注できるためリスクを抑えて販売できる半面、キャッシュフローは悪いと言えます。
卸売:約1~2ヵ月
いわゆるBtoB取引の卸売であれば取引先との契約なので様々ですが、概ね月末締め翌月末入金が多いのではないでしょうか。
そう考えると月初に受注しても入金されるのは約60日後となり、キャッシュフローは悪いです。
ただし自社では展開できない販路ができたり、ある程度まとまった数を受注できるといったメリットはあるのでどこまで許容するかは経営判断になりますね。
販路も重要だがキャッシュフローを忘れずに
今回ご紹介したShopifyとその他の販路を比較すると、Amazonが同じくらいで後は圧倒的にShopifyのキャッシュフローが良いと言えます。
とはいえ、プラットフォームはプラットフォームで独自の顧客やポイント制度、企画の実施などで集客できるのが強みです。必ずしもShopifyだけが良いという話ではないので、商材や戦略によって取捨選択するのが賢明です。
いくらたくさん売れてもキャッシュフローが悪くてはストアが成り立ちません。もっと言えば経営が厳しくなる可能性があります。
商品を仕入れて販売する、いわゆる小売や卸売は特にキャッシュフローを意識することが重要です。
仕入れた商品の支払いはいつで、販売可能になるのはいつで、売れた売上がいつ入ってくるのか。
経営者であれば当たり前とも言えることですが、意外と見落としてしまいがちです。
逆にいくらキャッシュフローが良くても、そもそも売れなければ意味がありません。
販売する商品やブランドのフェーズに合わせて使い分け、それと同時にキャッシュフローを意識して会社の資金がショートしないように管理する、これこそストアオーナーあるいは経営者の仕事とも言えますね。
いずれにしてもShopifyを利用することでキャッシュフローが良い環境になるのは間違いありません。
もし現在売れ行きは良いけどキャッシュフローに課題を抱えている、といったマーチャントはキャッシュフローの改善という打開策だけでもShopifyを検討する余地はあるのではないでしょうか。