呉 達人
Shopify新規構築をはじめ、自社EC・Amazon・楽天市場・クラウドファンディングを活用した総合的なEC運営支援に取り組んでいます。
前回の記事でクラウドファンディングの基本と購入型クラウドファンディングのプラットフォームを3つご紹介しました。
今回はより具体的にクラウドファンディングの前後で実施したい施策の具体的な内容、クラウドファンディングと相性抜群のShopify活用方法をご紹介します。
これからクラウドファンディングを活用して自社ブランドや自社商品を販売していきたい方向けにまとめていきます。
目次
クラウドファンディングとShopifyの相性
前回も少し触れましたが、クラウドファンディングを実施するにあたって求められる要件としてプロジェクト(商品)の「独自性」があります。
特に購入型クラウドファンディングで自社ブランドや自社商品、あるいは輸入代理店として海外ブランドを国内展開する場合、そのリターンの多くが「商品そのもの」となるでしょう。
この商品が既にAmazonや楽天市場、あるいは家電量販店やセレクトショップなどオンライン・オフライン問わず一般販売されていないことが基本的な条件となります。
つまり新規で立ち上げるブランドや、すでに展開しているブランドの新商品、新モデルなどのみクラウドファンディングが可能です。
※一部例外のプラットフォームもあります
クラウドファンディングを実施する目的は事業者によって様々ですが、独自性があるブランド・商品であればクラウドファンディングを実施して、終了後はいわゆる「公式オンラインストア」を設ける場合が多いでしょう。
自社で運営する公式ストア(自社EC)は手間も掛かりますが、ECモールでの販売や卸売に比べて利益率が良く、キャッシュフローも良い傾向にあります。
そういった意味で、新規ブランドや新商品の立ち上げフローとしてクラウドファンディングからスタートして、その後にShopifyで公式ストアを構築・運営する流れが主流になっています。
公式ストアを開設するだけならBASEやストアーズといった他のサービスでも問題はありません。
ただし、これらのサービスとShopifyの最大の違いは実行できる施策の自由度です。
打ち手が多ければ多いほどShopifyを活用すべきであり、それらの施策によってクラウドファンディングの成果が変わってくると言って過言ではありません。
クラウドファンディング向けShopify活用方法
では実際にクラウドファンディングを実施するにあたり、どのようにShopifyを活用できるか分析していきましょう。
クラウドファンディングは商品をリターンとする購入型クラウドファンディングを実施。併せてクラファン開始前にShopifyを活用した公式ストアを立ち上げると想定します。
開始前のリスト獲得
これはクラウドファンディングの施策全般に言えることですが、いまや国内でも認知度が高まったクラウドファンディングは「出せば売れる」ものではありません。
確かに2~3年前までは出しただけである程度売れた時期もありました。
しかし現在はプロジェクト数が増加しており、なおかつプラットフォームも増加しています。
支援者(消費者)側の使えるお金が比例して増えているわけではありませんので、総じてプロジェクトの二極化が進んでいます。
つまり巨額の支援を集める案件と全く集まらない案件の差が広がっているのです。
ではどこで差がつくのか?
もちろん、最も重要な要素は商品自体の魅力です。
商品そのものに魅力がなければ、どれだけ施策をしても売り上げは伸びません。
とはいえ、逆に言えば魅力的な商品でも施策が少なすぎては認知されません。
そこで重要なのがクラウドファンディング開始前の施策です。
特にクラウドファンディング開始前にShopifyでティザーサイトを作り、そこをLPとしてWEB広告を回し、公式LINEやメールマガジンなどのリスト獲得を着地点として集客する施策が有効です。
ティザーサイトとは「事前告知」といった意味のランディングページです。
よく映画の公開前に一部のシーンを見せて告知したりしますが、それと似たイメージです。
プロジェクト(商品)の一部を紹介することで関心を引き寄せ、最終的には「最新情報はこちらで!」といったイメージで公式LINEやメールマガジンなどに集めることで商品に興味がある人たちと事前に接点を得ることができます。
開始時の告知
上記の施策で獲得した顧客リストに対して、メールマガジンであればShopifyの標準機能であるShopifyメールで配信可能です。
従来は別のメルマガスタンドや配信サービスを使う必要があり顧客管理が煩雑になりがちでしたが、いまやShopifyがあれば一元管理可能。
クラウドファンディングが開始したらすぐにメールを配信することで一番お得なリターンを申し込みいただける可能性が上がります。
逆に、この部分をプラットフォーム任せにしてしまうとプロジェクトが伸びるかどうかも運任せになってしまいます。
もちろん獲得した顧客はブランドにとって大事な見込み顧客。
仮にクラウドファンディングでの申し込みがなくても将来的に何らかの接点で購入してもらえる可能性があります。
期間中の導線(計測)
実際にクラウドファンディングのプロジェクトが開始するとプロジェクト期間中の主役はプロジェクトページ(LP)となります。
各プラットフォームに独自の計測機能がある場合がほとんどなので、集客状況やコンバージョン率などを計測して施策を続けます。
ただし、プラットフォームによっては、例えばFacebook広告を配信しても「外部サイト扱い」のため正確に計測できないことがあります。
例えば最大手といわれるMakuake(マクアケ)は自社で広告配信可能ですが、計測タグ(FacebookピクセルやGoogleタグ)の設定はできませんので精度が上がりません。
このような場合、どうしても最終的なコンバージョン(支援)は計測できないので諦めるしかありませんが、広告のクリック率などコンバージョン手前の精度は上げることができます。
そのために広告のリンク先をプロジェクトページではなく、Shopifyで作ったページに遷移させます。
顧客からすればタッチポイントが増えることで煩わしさは出てしまいますが、広告→Shopify→クラファンにすることでShopifyからクラファンの遷移を計測可能になります。
プロジェクトページへ遷移する見込み顧客の傾向を計測・分析することでLPへ送客する精度は上げることができます。
Shopifyであれば自社で自由にタグの埋め込みができるなど、カスタマイズが可能だからこそですね。
終了後の予約販売
クラウドファンディングが終了すると提供すべきリターンの数量も決まりますので量産体制に入ります。
クラウドファンディングでどの程度の成果があったかによりますが、量産している期間に販売(=予約受付)しないのは機会損失となります。
そこでクラウドファンディング終了後、予約販売するのにShopifyを活用できます。
やり方はシンプルにShopifyで商品ページを作成し、そこに予約販売である旨を記載。
クラウドファンディングのリターンが出荷し終わってからの配送になる旨を明記しておけばよいでしょう。
もっと正確にやりたい方は予約受付機能が実装できるShopifyアプリもあります。
https://apps.shopify.com/preorder-now
https://apps.shopify.com/pre-order-pro
また、最新情報によるとShopifyの標準機能として注文ステータスのフルフィルメントステータスとして「スケジュール済み(Scheduled)」が追加されるそうです。この記事を書いている2021年1月時点ではShopify管理画面からはまだ利用できず、GraphQLAPIからのみ利用できるそうです。
https://www.shopify.com/partners/blog/shopify-api-release-january-2021#scheduled-fulfillments
これによって入荷する時期にスケジュールを合わせれば予約注文のステータス管理がしやすくなります。
(特に既にストア稼働中で通常注文もあるストアには便利そうですね)
このように「予約販売」に関しても機能が充実してきたのもShopifyの強みです。
一般発売の開始
クラウドファンディングのリターン出荷が終わり、一般販売開始のフェーズに入ればShopify(公式ストア)が主役となります。
ここがShopifyの本業とも言えますので細かい施策は割愛しますが、例えば一般販売時に新たなカラーが追加される場合にクラファンの支援者限定クーポンを発行したり、アフターサービスの受け皿にしたり、クラファンの応援コメントをお客様の声として掲載するなどが可能です。
【番外編】自社クラファンの実施
最後に番外編として、クラウドファンディングを自社EC(Shopify)で実施することも可能です。
商品ページの見せ方を通常販売ではなく、クラウドファンディングのような支援総額・目標達成率・終了日を掲載することが可能です。
これはShopifyアプリを使うと簡単に実装できます。
https://apps.shopify.com/crowdfunder-diy-pre-order-crowdfunding-campaigns-for-shopify
この機能を活用して集客することでプラットフォームに多額の手数料を支払うことなくクラウドファンディングが可能です。
ただクラウドファンディングをプラットフォームで実施すること自体にも価値はありますので、目的を明確にするのが重要。
そういった意味で番外編としましたが、いまや一定の資金やノウハウがあればプラットフォームに頼らず、Shopifyだけで全て完結させることも可能ですね。
購入型クラファン×Shopifyは相性抜群
大事なことはクラウドファンディング単発で終わらないことです。
せっかく集客・獲得した顧客をプラットフォームだけに流して終わりでは勿体ないです。
クラウドファンディングを活用するにしても、Shopifyであればフェーズごとに活用できます。
一般販売開始後も顧客との接点を構築できます。
逆に全く何もない、ゼロの状態からShopifyで公式ストアを立ち上げても売り上げが上がるまでに時間が掛かります。
そういった意味でクラウドファンディングを活用すれば無名の新規ブランドでも一定の露出が可能です。
クラウドファンディングのプラットフォームとShopifyを双方うまく活用することで新規ブランドや新商品の立ち上げに掛かる時間やコストを最適化することができるのです。
購入型クラウドファンディングとShopifyは相性抜群ですので、ぜひ検討している方は双方の利用をお勧めします。