Shopify Editions 2023夏・マーチャント向け注目トピックスまとめ

呉 達人

こんにちは。長野県佐久市のShopify Experts認定企業・合同会社FRONTIER TRADE代表の呉(くれ)です。
Shopify新規構築をはじめ、自社EC・Amazon・楽天市場・クラウドファンディングを活用した総合的なEC運営支援に取り組んでいます。

日本時間7月26日未明にShopifyから膨大な量のアップデートやリリース情報が発表されました。

その数はなんと100以上。
関係者泣かせともいえる圧倒的なスピードでEC業界に革新を与え続けるShopify(ショッピファイ)
そこに痺れる憧れる!

とはいえ、新しい機能にはついつい目が行ってしまいがちですが、よくよくチェックしてみると実はアメリカ限定だったり、自社にとってはまだ不要な機能だったり、ということも珍しくありません。
むしろ、必ずしも新しい機能が自分たちのストアに必要とは限りません
しっかりと精査する必要があります。

しかし日々の業務に追われながら最新情報をチェックするのは並大抵のことではありません。
そこで今回、微力ではありますが弊社なりに今回のShopify Editions 2023夏で発表された情報の中から、注目したいトピックスをまとめていきたいと思います。

少しでも日々のEC運営、あるいはこれから自社ECサイトを運営していきたい方にとってお役に立てれば光栄です。

Shopify Editionsとは?

Shopify Editions」とはShopifyのリリースイベントのようなものです。

他にも「Shopify UNITE」というリアル開催の交流イベントがあり、その中でShopifyからの最新情報が発表されるケースもあります。
Shopifyをご利用のマーチャントさんであれば、ひとまず「Shopify Editions」と「Shopify UNITE」は「Shopifyから何か大きな発表があるイベント」と認識いただければ問題ないでしょう。

Shopify Editions 2023夏・注目トピックス

それでは早速、今回のShopify Editionsで発表された内容から日本のマーチャントが注目すべきトピックスをまとめていきます。
今回は特に世界的にも話題となっている生成AIに関する機能も発表されています。
いよいよEC業界にもAI活用の動きが本格化しているといえるでしょう。

ピックアップした内容は弊社なりの見解・コメントも書いていきたいと思います。

補足

以下、見出し横のマーク
〇=公開済みで利用できる状態
★=発表のみで利用できない状態(2023年7月28日時点)
とします。

SHOPIFY MAGIC / Sidekick ★

「コマースに特化したAI」というキャッチコピーで発表されたのが『Sidekick』。
Shopifyに直接組み込まれたAI機能で、ビジネスを成長させるマジックを体験してもらいたい、という意図からShopifyMagicとの記載もあります。
『Sidekick』は生成AI搭載のマーチャント向けチャットボットといえそうです。

EC運営に必要な日々の業務、例えば「全商品を10%値引きしたい」といった作業を『Sidekick』に投げかけると、瞬時に実行してくれるようです。
まさにShopify管理画面に内蔵された作業代行スタッフ
クーポンコードの発行やレポートの生成など、マーチャントが頭で思い描いた内容をアウトプットしてくれるようです。

マーチャントにとっては心強いですね。
反面、我々のような支援事業者(Shopify Experts)にとっては脅威ともいえます。
簡単な作業代行は『Sidekick』に取って代わることができそうなので、よりマーチャントの売上アップを中心とした「人間にしかできない仕事」が問われる時代となっていきそうです。

なお、記事公開日時点では、まだ利用することはできないようです。

管理画面のアップデート 〇

こちらはすでにリリース済みとなっていますが、管理画面が大幅にアップデートされました。
ログインすればすぐ分かりますが、まず全体的なデザインがガラッと変わりました。
従来はShopifyメインカラーのグリーン主体でしたが、今回のアップデートによってグレーやブラックといった暗めのトーン中心に。
「大人びた」といった表現が合うか分かりませんが、これまで以上にプロフェッショナル感が増したように感じます。

もちろんデザインが変わっただけでなく、操作性も向上。
読み込み速度の高速化をはじめ、より直感的な操作ができるように意識されているようです。

日々の業務で触れる機会が多い管理画面がさらに使いやすくなったといえます。

慣れないうちは違和感を感じるかもしれませんが、どんどん触っていって使い込んでいきましょう。

セクション内カスタマイズ ★

現在、Shopifyテーマをノーコードでカスタマイズするには「セクションを追加したり並べ替える」という方法が採用されています。
これでも十分、直感的に操作でき、キャッチコピーや写真、文章を用意すれば本格的なECサイトが誰でも簡単に構築できました。

今回のアップデートでは、さらに「セクションの中身」も細かく操作できるようになるそうです。
ドラッグ&ドロップ、サイズ変更、グループ化などの操作によって、アップしたコンテンツをより細かく、自由自在に扱えるようです。

Shopifyテーマのカスタマイズがしやすくなることで、マーチャントはよりコンテンツの中身や商品そのものの精度を上げることに時間が使えるようになるといえます。
私は、マーチャントさんがHTMLやCSSといったコードを覚える必要はないと考えています。
もちろん知っているに越した事はないですが、そこまで専門的な知識が必要な場面があれば、ぜひ我々Shopify Expertsに依頼するのをオススメします。

ストアやビジネスのフェーズがまだそこまでではない場合、Shopifyテーマをノーコードでカスタマイズするだけでも十分です。
若干話は逸れますが、ECサイトはカッコよさより使いやすさ、見やすさの方が何百倍も大事です。
サイトがカッコいいから商品を買ってくれる、ということは、まずありません。

コーディングを覚えることが本質ではなく、商品やコンテンツを磨き上げることが重要です。

Shopify Subscriptions ★

いよいよShopifyから公式に「定期購入」機能がリリースされるようです。

Shopify Subscriptions』によって登録した商品に希望する決済サイクルや割引率などを適用するだけで、簡単に定期購入商品(いわゆるサブスク)ができるようになります。

とはいえ、Shopifyからも「より複雑な機能が欲しい場合は外部アプリを使うように」とのコメントがありました。
この点からもShopify Subscriptionsの機能はシンプルなものと予想されます。
単品で決済サイクルや割引の適用なども複雑ではない場合に活用できそうですね。

一方で、定期購入サービスそのものを始めるべきか、自社商品にマッチするのか、は熟考する必要があるといえます。
もともと定期購入機能自体は日本国内でもアプリを提供している会社さんがありますので、機能自体は簡単に整備できます。
しかし、だからといって必ずしも定期購入が良いとは限りません。
機能が使えることと、実際にうまくいくかは別の話です。

簡単に使える機能が提供されるのは嬉しい限りですが、導入是非は慎重な経営判断が求められますね。

Shopify Bundles 〇

Shopify Bundles』はShopifyが提供する公式アプリで、登録した商品から自由に組み合わせてセット販売ができる機能。

単品を商品登録して、それとは別にセット販売用にも登録するのは在庫管理の観点からも手間がかかります。
Shopify Bundlesを活用することで商品自体は単品を登録・管理すればよく、その中からセット販売にすることで平均注文単価の引き上げ効果が見込めます。

在庫の管理もしやすいので、セット販売と相性がいい商材を扱っているマーチャントさんは活用してみる価値があるかもしれませんね。

生成AI搭載のShopify Inbox ★

Shopify Inbox』はShopifyが提供するチャットコミュニケーションツールです。

ストアに設置しておくことで、お客様からの質問に応えたり、「よくある質問」を予め用意しておくことで問い合わせの手間を減らすことができます。
Shopify Inbox自体はすでにリリースされており現在も利用できますが、今後さらに生成AIが搭載される見込みだそうです。

詳細こそ発表されていませんが、恐らくChat GPTのようにお客様からの問い合わせ内容をAIが判断して返答してくれる、という機能になろうかと思われます。

とはいえ、どこまで正確な回答が出るかなど不明点も多いのは事実。
かえって信頼を損ねるような回答が出てしまうと問題ですので、基本的には固定で予め設置しておくか、あとは実際に人の手で確認・回答するかが望ましいように思います。
この辺りは、まだ「様子見」が現実的ではないでしょうか。

メタオブジェクト 〇

メタフィールドに続く新機能としてメタオブジェクトがリリースされています。

メタフィールドもメタオブジェクトも、簡単に言えば管理画面上で特定の情報を登録しておき、その情報を使いたいところで出力させる、いわば「ストアオリジナルのデータベース」のようなものです。

メタフィールドの場合、例えば「素材」や「サイズ」という項目を登録しておき、その情報を商品管理画面から入力しておくと実際に商品ページに表示することができます。
商品説明に直接入力する、いわゆるベタ打ちに比べて汎用性が高いため、特に商品数が多いストアで重宝する機能です。

メタフィールドは主に商品向けの機能ですが、今回のメタオブジェクトはコンテンツ向けの機能といえるのではないでしょうか。
予め特定の情報(画像・動画・文章)を、いわば「オリジナルパーツ」として登録しておくことで、表示したい箇所に設置することができます。
パーツのテンプレートともいえそうですね。

例えばブランドストーリー、よくある質問、ストア情報といった固定パーツの組み合わせを登録しておくことで「ここに出したい」時にパッと組み込みできます。
コンテンツ版のオリジナルデータベースですね。

これは情報量が豊富なストアにとって大きな武器となりそうです。

ShopifyFlowがベーシックにも開放 〇

最後は日々のルーティーン業務を自動化できるオートメーションツール『ShopifyFlow』について。
当初は利用できるShopifyプランに制約があったものの、スタンダードプランまでは使えるようになっていました。

これがついにベーシックプランまで解放され、主要な全プランでShopifyFlowが使えることになりました。
ShopifyFlowは「特定の条件に対して特定の処理をする」といったワークフローを予め設定しておくことで、条件に合致したらすべて自動で処理してくれる便利なツールです。

ストア開設当初は不要かもしれませんが、売り上げが伸び、業務量が増加してくるとスタッフのリソースだけでは足りなくなってきます。
またそもそも自動的に検知してくれることも重宝するため、これがベーシックプランでも利用できるのはありがたい限りです。

すでにベーシックプランで利用できるようになっています。

最新情報がすべてじゃない

全体としては膨大な量のリリースとなったShopify Editionsですが、中には開発者向け、大規模(ShopifyPlus)向け、日本は対象外など「気にしなくてもいい」情報もあります。

今回ピックアップしたトピックスもごく一部ではありますが、早速活用できる内容も含め、EC運営にインパクトがあるものを厳選しました。

とはいえ、冒頭にも書いたとおり、最新情報をすべて取り入れれば良いというものではありません
運営しているECや会社・ブランドのフェーズによって必要なツール(機能)や打ち手は千差万別。
たとえ同じ業界であっても、他社がやってるから自社も取り入れれば成功する、とは限りません。

そういった意味で、最新情報も含めShopifyで何ができて、何が必要なのかを的確にご提案することこそ、私たちの仕事であると考えています。
生成AIの箇所でも書きましたが、私たちの仕事も決して安泰ではありません。
簡単な作業であれば、もう取って代わられる時代になりました。

一方で、生成AIをはじめ、Shopifyが提供する最新テクノロジーをうまく使いこなせば、これまで時間がかかっていたビジネスの成長が、いい意味で短縮される可能性は充分に秘めています

時には「急がば回れ」が大事な時もありますが、闇雲に時間をかける必要もありません。

そのあたりの判断はAIにできないと考えていますので、マーチャントさんの努力や熱量はもちろん、私たち支援側の熱意や引き出しも問われる部分だと感じています。

また何か新しい情報などがあれば、記事にまとめたり、私(代表・呉)のTwitterでツイートしていきたいと考えています。
ぜひTwitterもフォローいただけると嬉しいです!(Shopify以外の事も多々つぶやきますが…)

今後ともよろしくお願いいたします。

情報引用元
https://www.shopify.com/jp/editions/summer2023

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