呉 達人
Shopify新規構築をはじめ、自社EC・Amazon・楽天市場・クラウドファンディングを活用した総合的なEC運営支援に取り組んでいます。
以前にクラウドファンディングを運営するGREEN FUNDINGの担当者さんと食事をする機会がありました。
その際に伺ったクラウドファンディングが伸びるポイントをシェアいたします。
目次
本質が問われる時代へ
先にクラウドファンディングの基礎、いわば本質の部分を改めて考えていきましょう。
クラウドファンディングの本質は、アイデアはあるけど資金がないベンチャー企業やスタートアップ企業が新商品や新サービスを提案し、資金調達をするための仕組みです。
インターネット上で不特定多数の人から支援を集め、その見返り(リターン)として新商品ならその商品そのものを、サービスなら割引特典などの付加価値を付与して提供します。
もともとアメリカで誕生したのがきっかけで、それが日本でもここ4~5年で本格的に上陸したようなイメージです。
日本とアメリカのクラウドファンディングには決定的な違いがあります。
それは商品そのものが「企画段階」なのか「試作品段階」なのかです。
前者はアメリカ、後者が日本です。
前者はまさに企画・設計段階。よくて試作品ができている程度なのでプロジェクトが成功して初めて本格的な製品化に向けて動き出します。
つまりプロジェクト終了から実際にリターンを受け取れるまでの期間が長い傾向にあります。
後者、日本の場合はある程度量産できることは決まっており、試作品もできている段階でプロジェクトを起案する場合が多い傾向にあります。
こうした背景もあって、日本のクラウドファンディングは「予約販売のECサイト」といった意味合いが強くなりました。
しかし、その裏にある本質は、やはり「本気でその商品(またはサービス)を普及させたいか」にあると考えています。
短期的なお金儲けや一時的なブームに乗っかるだけの商品・サービスも見受けられるのも事実です。
それが良い悪いという話ではありません。
ただ少なくとも継続性・成長性に欠ける展開は長い目で見て企業にとって良い効果を生むとは考えづらいのではないでしょうか。
本質が問われる時代だからこそ、こだわりや熱意のあるオーナー・起案者が生き残る時代に突入するように思います。
クラウドファンディングを伸ばす3つのポイント
さて、話を戻してGREEN FUNDINGで支援を伸ばしているプロジェクトを分析してみましょう。
例えば、7,000万円を超える支援を集めたヒートジャケットのプロジェクトがあります。
ヒートジャケットとは電力でジャケットを温めて寒さを凌ぐためのアイテム。
確かに画期的ではありますが、商品自体は数年前からありました。私が3年くらい前に参加した海外の展示会でも見たことがあるくらいなので、物凄く珍しいものではありません。
実際、過去にクラウドファンディングを実行した会社もあったはずですし、Amazonで販売もされています。
それでも今回7,000万円を超える支援を集めた要因を担当者の方に聞いてみました。
もちろん担当者の方の見解ですので、それが絶対とか支援額を保証するといった内容ではありませんが、参考になれば幸いです。
商品の品質
まずはも品質。
クラウドファンディングの場合は事前に商品を手に取って確認することができません。
また通常のECと違い、新たに登場する商品ばかりなので他のプラットフォームなどでの口コミもない状態です。
あくまでもプロジェクトページ上やYouTubeなどの動画を使って紹介するしかありません。
そのため実物が届いてみると「書いてあったことと違う!」というトラブルは決して珍しくはありません。
そういった意味で、今回のプロジェクトではサンプルを事前に使ってもらったレビューを掲載したり、特許を取得していることなどのエビデンスがあることで品質を訴求していました。
もちろん最終的には実物を使ってみないと分かりませんが、少しでも表現できる品質を表現するのは重要です。
たとえ特許がなくても、試作品の段階で「品質チェック」ができる第三者機関でテストするのもオススメです。
例えばバッグであれば、耐久性の1つとして指標となる耐荷重テストがあります。
耐荷重テストをすることで、堂々とプロジェクトページ(あるいはその後の商品ページ)に「〇キロまでOK」と記載できます。
あとは試作品が複数あれば、実際にモニターとして第三者に使用してもらうことも効果的です。
ユーチューバーやインスタグラマーのような影響力のある方に取り上げてもらうのもいいですが、どうしても忖度してしまう場合もあります。
本質的な品質チェックをするなら忖度なしの第三者に依頼するのもオススメです。
クリエイティブ・デザイン
ここで言うクリエイティブとはプロジェクトページ全体のデザインや広告出稿のデザイン(バナー)です。
今回はクリエイティブが良かった、要するにカッコよかったのがポイントだったと伺いました。
先ほどの品質にも繋がりますが、例えば同じ品質の商品だったらどちらを買うか?を考えたときにページのデザインや写真素材がカッコいい方を選ぶと思います。
これはクラウドファンディングに限らずShopifyを活用したECサイトやプラットフォームでの販売でも言えることです。
たとえ安価な商品だったとしても写真や動画はしっかり用意すべきですし、適切な加工をしてカッコよく見せるのが重要ではないでしょうか。
価格帯(値ごろ感)
消費者が最終的に購入を判断する大きな要因として価格が挙げられます。
今回のプロジェクトはちょうどいい価格帯だったことが成功のポイントではないかと伺いました。
価格設定は最重要と言っても過言ではくらいの判断です。
必ず発生する原価をもとに、その商品のジャンルや市場での相場、あるいは独自性や機能性などあらゆる要素を加味して設定します。
一度設定した価格を変えることは容易ではありません。
ただし、消費者の心理として安ければいいというわけでもありません。
例えばiPhoneが1,000円で販売されていたら、明らかに正規品で無いことは分かるでしょう。
せいぜいジャンク品というところでしょうか。
「安過ぎて不安になる」という価格帯もあります。
逆に、例えば軽自動車が500万円で販売されていたら「高過ぎて買えない」となりますが、ベンツが500万円であればそのくらいかなとなります。
重要なのは値ごろ感。
安過ぎず高すぎない、まさにちょうどいい価格設定ができるかどうかは重要な要素と言えます。
オンラインでも本質を大事に
クラウドファンディングの話をしましたが、Shopifyを活用したEC運営でも同じことが言えると考えています。
私たちはECサイトの構築・運営支援を行なっておりますが、Shopifyを活用したから何でも売れるわけではありません。
Shopifyはあくまでも手段の1つであり、大事なことはブランドや商品の根底にある本質的な要素だと考えています。
言い方は悪いかもしれませんが、売れないものはどう頑張っても売れません。
それは弊社自身も経験したことなので心が痛むほど分かります。
クラウドファンディングも同様で、あくまでも商品やブランドを認知拡大・加速させるための手段です。
オンラインでもオフラインでも、商品・サービスを提供する先には必ず消費者(使用者)がいます。
そのことを意識して、丁寧に展開されている商品・サービスは成功している印象があります。
もちろん、私たちもその点を十分に意識してまいります。